公務員の休暇や給料はどう決まる?

 

Ⅰ 休暇や給料に関する取り決めを「労働条件」と言います

 

 民間企業の従業員(正規雇用・非正規雇用)も公務員も関係なく、雇われて働くひと(労働者)はすべて、雇用者(=使用者=任命権者)との間で、休暇や給料について何らかの条件の下で働いています。この条件のことを「労働条件」と言います。

 公務員を除くすべての労働者については、労働条件の最低基準は「労働基準法」という法律で定められています。これに対して公務員の労働条件は、「国家公務員法」や「地方公務員法」やその他の特別法、さらには人事院規則や、地方自治体の条例・人事委員会規則で決められています。

 また公務員を除くすべての労働者は、日本国憲法で保障されている労働三権(①団結権・②団体交渉権・③団体行動権)が完全に認められています。そのため自分たちに有利な労働条件を得るために、労働者は労働組合を結成し、使用者と団体交渉をし、交渉が不調のときはストライキなどの団体行動を起こすことができます。これらの行動は憲法で保障された権利の行使ですので、正しい行為であり、これらの行為をしたことによって犯罪に問われることはありません。

 

Ⅱ 公務員は労働三権が制約されています

 

 しかし公務員は、日本国憲法で保障されている労働三権の一部が行使できません。「公務員」であることを理由に制約されているのです。詳しくはこちら(総務省のサイトへ)

 具体的には、公立高校・特別支援学校の教職員の場合は、①「団結権(労働組合を結成する権利)」の全部と、②「団体交渉権(使用者と組合が交渉する権利」の一部は認められていますが、③「団体行動権(争議権=ストライキをする権利など)」は全く認められていません。

 同じ公務員でも、バスや地下鉄の運転手などの職員については、①団結権はもちろん、②団体交渉権も完全に認められています(③団体行動権が認められていない点は同じ)。その一方で、警察官や自衛官、検察官や裁判官は、①団結権さえ認められていないため労働組合がありません。

 諸外国では、公務員の労働基本権(上記①②③すべて)が完全に認められている国もあります。日本で公務員の労働基本権が制約されていることは国際的にも問題視されていますが、政府は態度を変えていません。

 このように公務員は、労働条件が法律や条例など議会で定められる仕組みになっているうえに、労働三権も制約されているために、民間企業の従業員などと違って、雇用者=使用者=任命権者との交渉だけで労働条件を有利にしていくことが困難な事情にあるのです。

 このような事情があるため、国家公務員については人事院が、地方公務員についてはそれぞれの地方自治体の人事委員会が、首相あるいは首長(知事・市町村長)に対して、あるべき労働条件について「勧告」をすることになっています。

 

Ⅲ 秋ごろ県人事委員会が勧告を出します

 

 宮城県では、県人事委員会は毎年秋(9月~10月ごろ)に勧告を出しています。

 そのしばらく前の8月に国の人事院が「人事院勧告」を出しますので、ある程度はそれを考慮した内容になっていることが多いのですが、県人事委員会はいちおう独立した存在ですので、必ずしも人事院勧告に拘束されているわけではありません。

 

Ⅳ 組合と県教委の団体交渉を経て、県議会が最終決定します

 人事委員会の勧告が出ても、それがそのまま実施されるわけではありません。あくまでも「勧告」に過ぎないからです。

 職員の労働条件をどうするかは、知事の提案に基づいて、議会が最終決定します。

 組合は、人事委員会の勧告を基礎に、少しでも職員に有利な条件となるように、まず任命権者(使用者)である県教委(総務課長や教育長)と、さらには県の総務課長や知事本人との間で交渉を続けます。【右写真】

 その交渉の結果、人事委員会が勧告しているよりも良い条件で組合と県教委が折り合うこともありますし、逆に人事委員会勧告の内容よりも悪い条件で県教委が押し切ることもあります。この交渉は、組合活動の中でもっとも重要かつエキサイティングです。

 さらにその交渉が妥結しても、その内容を盛り込んだ条例や人事委員会規則の改正案が議会で議決されなければなりません。議会が妥結の内容を覆すこともあり得ます。でも一般的には議会は妥結内容を尊重しています。



 このように、教職員の労働条件は、労働三権の制約の下で、人事委員会勧告を基礎に、県教委(や知事)との交渉と、さらには議会の議決の結果で決まるのです。